第9章 姉の顔
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次の日、及川は部活へ行くためいつもの時間帯の電車に乗った。
日曜日なのに、割と混んでいて座れない・・・
仕方なく扉付近に寄りかかって音楽を聴いていると、
ちょんちょん、と服の袖をする引っ張られる感じを覚えて振り向いた。
「え・・・?」
そこには、意外な人物がいたーーー・・・
「ミオ・・・・・・?」
彼女、ミオは恥ずかしそうにほんのり頬を赤らめて、及川を見上げている。
「及川さん、あの・・・昨日はありがとうございました。家まで送ってくれたり、介抱してくれたり・・・」
ぺこっと頭を下げてくるミオ。
「あ、うん、ミオは体とかは大丈夫?」
「はい・・・及川さんが、お水くれたので」
もう一度頭を下げるミオ。
そして、カバンから丁寧に袋に入れられたものを差し出す。
「昨日お借りした上着です。帰ってすぐ洗濯して乾かしたので・・・」
と、丁寧に両手で渡す彼女からそれを受け取る。
それからミオは少しバツが悪そうに目をそらす・・・
「その・・・本当にすみませんでした。知らない人の介抱なんて・・・」
「何言ってんの。俺いなかったら、きっと変な男の家で目覚めてたよ」
えぇっ!と声を漏らすミオ。
(あ、意外とコロコロと表情が変わる・・・)
ミオを見ながら、及川はふふっと笑った。
「人助けできて良かったよ。あ、でも次からはもうちょい、飲む量抑えた方が自分の為だよ?」
そうアドバイスすると、こくん、素直に頷くミオ。
「ありがとうございました。それから・・・今まで素っ気ない態度取っててすみませんでした」
今までで一番深く頭を下げるミオ。
今度は及川が慌てて顔を上げさせる。
「いいっていいって。初めは抱きついた俺が悪いんだし、色々あるんだよね、無理に深入りしようとして、俺こそごめん」
これでおあいこね、とでも言うように及川はミオに微笑みかける。
すると、ミオは、
及川に初めて、笑顔を見せたーーー・・・
「はい・・・」
そうして三つの歯車が・・・同時に動き出した・・・・・・ーーー