第8章 少女の純情禄
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「徹くんは、バレーが本当に好きなんだね」
「な、なに突然」
及川の自室は和室。
敷いた布団に寝そべって、スマホをいじっている及川は体を起こして、リオを見た。
「ん?今日練習見てたんだけど、そんな風に見えたから」
「見に来てたの!?会いに来たら良かったじゃん」
「外で私が話しかけたら、徹くん絶対反応するでしょ?他の人に私は見えないんだから、傍から見たら徹くんが変な人って思われちゃうよ」
確かに、と及川は肩を竦めた。
そして、自身の手を見つめた。
何本も、何万本ものトスを上げてきたこの手を・・・
「楽しいことばかりじゃなかったけどさ、やっぱり続けてるってことはそれが人生から切り離せないからだと思うんだよね」
死ねば、バレーボールもできなくなる。
トスを上げることも、ボールを追いかけることも、
勝利した幸福感も、味わうことが出来なくなる。
そう思うと、
切なくなる。
だから・・・
「だから、俺はバレーができる今を、大切にしなくちゃね」
にこっと。いつもみたいに笑う。
リオはそんな彼を見守ると決めた・・・
うん、と頷くことしか、できなかった。