第7章 二人の事情
死神であるリオは、いつも終電に現れた。
それは、日中は死神界での公務があるからというのもあるが、夜の時間帯の方がターゲットは1人で過ごしている場合が多く、観察しやすいからだそうだ。
死神は、物やドア、生きていないものには触れることができ、生きているものには触れられない。
死神はターゲットとあまり親密な関係になってはいけない。命日が来た時に情が移り、魂を逃してはいけないから。以前リオが一ヶ月もいなかったのは、口うるさい上司にその事を指摘され、なかなか死神界から出してもらえなかったから、らしい。
これが、リオが教えてくれた死神事情。
あの日、自分の死が近くに迫っていることを告げられた及川は、今を全力で生きること、そしてリオはそれを見守ることを約束した間柄になった。
今までは終電でしか会えなかったが、リオは及川が部屋で1人の時、1人でご飯を食べる時は彼の家にも行って話をしたりする様になった・・・
「死神ってさ、もっと黒いローブみたいな服着て鎌持ってるイメージあったけど、違うんだね」
「それ、結構古臭い死神像だね。黒いローブとか地味すぎ。そんなんされたら仕事ボイコットしちゃうよ」
及川家のリビングで、二人で向かい合ってうどんを啜る。
勿論死神であるリオに空腹感などは無いが、嗜好品として食事はするのだそうだ。
本当は店頭に並ぶスイーツも食べてみたいが、他の人からはリオは見えない為、ただ勝手にスイーツが浮き上がり、消えてしまうと言う怪奇事件を招き兼ねないため、我慢してるという。
案外死神は死神で苦労しているのだと思った。