第6章 0の付く時計
「死、神・・・?」
何ともメルヘンな名前が飛び出す。
しかし、及川はこの世に生きていない彼女という存在を認めてから、もう何がきてもおかしくないと思えてきた。
「うん」
リオは頷く。
「私はね、死期の迫った人の近くで、死ぬ間際、その人の最期を見届け、そして、亡くなった人の魂を、あの世へ連れて行ってあげることが仕事なの」
なんとも、死神らしいことを言う。
「リオが、魂を狩ったりするんじゃないんだ・・・」
「ないとは言えないけど、それは死んでるのに、この世への未練が断ち切れなくて、生きた人へ迷惑をかけてしまいそうな人にだけ、そう言う措置をすることもあるわね」
でも、大体はさだめられているから・・・
病気や、事故や、寿命で・・・
自然と、肉体から魂が離れていくようになっているの
そう話す彼女。
「じゃあ・・・」
及川は静かに口を開いた・・・
「俺も・・・死ぬってこと・・・?」
死が迫っている人の最後を見届け、あの世へ送り届けるのが仕事の彼女が・・・自分の前にいるということは、
つまり、自分はその運命にあるということだろう・・・
リオは頷きもせず、否定もせず、ポケットの中から、何かを取り出した。
カチャリと金属音の鳴るそれは、何の変哲もない、ただの腕時計だった。
「よく見て」
それを、見えるように及川の目の前に差し出し、及川はそれを凝視した。
何の変哲もない、と思っていた腕時計は、12時を指す場所に何故か0の文字が刻み込まれている。
「これはね」
静かに、リオは口を開く。
「あなたの、寿命を表してるの」
時計のように、一分一分進むのではなく、不定期に進む針。
0へと進む針。
それは確実に、終わりを示している・・・