第6章 0の付く時計
「いや、俺、今まで幽霊とかそう言うの見たことないし。だから、ほんと、生きてる人間だって思ってたよ」
今だってにわかに信じられない。
別に透けてもいないのに、死んでいるなんて・・・
「まぁ、完全に幽霊って訳でも無いからね。それに近い存在って言うのかな」
「え?」
リオは、きょとんとする及川の目の前に立ち、すっと、彼の胸に手を伸ばした。
触れている位置にいるのに・・・
触れている感覚はなかった・・・・・・
やはり彼女は、生きていなかった。
「私はね、徹くん・・・」
小さな唇が紡ぐ。
「・・・・・・死神なの」
死した魂を迎えにくる存在なのだと。