第21章 エピローグ
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「国見ちゃん、もっとスピード上げて!急いで!」
「無茶言わないで下さいよ。ここ、結構警察張り込みしてるんですよ。速度違反なんかで捕まりたくないです」
「俺はここで国見ちゃんが捕まってもいいから早く行きたい!」
「それ、人として最低なやつっス」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ車内。
及川は着こなした上質なスーツのネクタイを緩め、そわそわとした様子を隠さずに外の景色を見やる。
そんな様子で助手席に座った高校時代の先輩を、運転席からちらりと見て、国見はすぐに視線を前に戻した。
「ミオの両親は合流できたんですか?」
「うん、昨日の夜からついててくれて、本当、助かるよ」
及川はスマホを開き、新着のメッセージが無いか確認する。
その左手の薬指にはめられた指輪が、きらりと光る。
「今更良いんですけど、なんで俺が送んないといけないんですか。及川さん、割といいの乗ってましたよね?」
「割とって言わないの!今、丁度車検出してて車無かったんだよ!出張帰ったら取りに行く筈だったのに・・・っ」
及川は悔しそうに唇を噛んだ。
「予定より大分早いんですよね」
「そう、出張も終わって車検も終わって、超綺麗な車と俺で、ふたりを迎えに行こうと思ってたのにさ」
心の準備がまだできてないよ・・・
と、呟く及川の顔は・・・
「にやけすぎてて、きもいっす」
「今の俺なら、何を行っても許してあげちゃうよーっ」
と、国見にウィンクする及川。
後部座席には、先程出張先から慌てて一時帰還した際のキャリーケースが乗せてある。
「及川さん、飛行機では眠れました?」
「うーん、あんまり。機内でも、残してきた仕事やってたからね」
口調は陽気な彼そのものだったが、仕事疲れでゴシゴシと目をこする及川。
目の下のクマが濃い。
「じゃあ、着くまでシート倒して寝てて下さい。ミオ・・・久々に見る及川さんの顔が死んでたら、気遣うだろうし」
国見の助言に、及川は頷いた。
「そうだね、じゃあ・・・お言葉に甘えちゃおうかな」
言い終わると同時に、座席を倒す及川。
「後ろにブランケットあるんで、よかったらどうぞ」