第20章 Dearest
及川の腕の中で、リオは一番幸せそうに微笑んだ。
その笑顔は、及川にとって光だった。
リオがいなければ、ミオに出会えなかった。
ミオに出会えなければ死ぬことを恐れていなかった。
死ぬことを恐れなかったら、きっと、きっとこんなに・・・
誰かを大切に想う気持ちなんて、知らずにいただろう・・・
誰かのためになんて、きっとこの感情を知らずにいただろう・・・
「リオ・・・っ」
リオの体は胸の辺りまで消え始めていた。
「私、徹くんを好きになってよかった。大好きな人のために何かできるって、こんなにも幸せなことなんだね・・・っ」
私、出会った頃は、触れ合うことすらできなかったのに・・・
いま、やっと・・・ーーー
「やっと・・・徹くんの温もりを感じられる・・・」
温もりを、匂いを、愛おしさを・・・肌で感じる・・・
愛してる・・・・・・
たとえ結ばれないとしても、
忘れられていくことだとしても、
どんなことがあっても、
私が徹くんを愛した事実は、永遠に変わらない真実・・・・・・
「だから、信じてね。
また、巡り会えるって・・・」
及川を映すリオの瞳は、まるで未来を見据えているようだった・・・
この目に、自分はずっと憧れていた・・・
いつだって明るく前を向いていたこの瞳に・・・
「うん、信じるよ・・・」
リオの消えかかった手を握り、及川は笑って見せた。
「ミオと待ってるから・・・」
大丈夫・・・きっと、また会えるから・・・
その日まで・・・
にこりと、微笑み返した。
「・・・・・・約束だよっ」
そうして、彼女は消えた・・・・・・
及川の意識も、すうっと遠のいて行きーーー・・・