第20章 Dearest
「え?」
「ミオを連れていくのは私の仕事、だけどね・・・」
ふるふると、首を横にふる。
そして、困ったように微笑んだ。
「できないよ、大切な・・・妹だもん」
ずっと、産まれる前からずっと一緒だった自分の片割れ・・・
大切な、妹・・・
「リオ・・・」
ミオは、胸に手を当ててリオを見た。
リオも、ミオを真っ直ぐに見つめ返す。
やっと、2人の視線が交差される・・・
「ミオ・・・」
すぅっと息を吸って、リオは静かに言った。
「ミオ、自分の体の中へ戻って」
「え?」
「今なら、まだ間に合う。だから・・・入って」
リオは、魂の抜けたまま眠るミオの肉体を指して言った。
「そんなこと・・・していいの?」
ミオにも、及川の顔にも・・・戸惑いの色が浮かんでいる。
リオは魂を連れていく死神のはずなのに・・・
彼女は、死神として有り得ないことを言っている。
それは、リオもわかっている。
「禁忌に決まってる。あるべき原理に逆らって・・・死ぬ筈だった人をこの世に留めさすなんて」
「じゃあどうして・・・っ」
リオは、困惑するミオの手を、両手で包むように握った。
「生きて・・・ほしいから・・・」
素直に、ただ望むこと・・・
「ミオには、生きてほしいの・・・」
それは妹を想う姉の顔そのもので・・・
本気で言っていることを悟ると、ミオは、震える唇で必死に言葉を紡いだ。
「私が生き返れば・・・リオはどうなるの・・・?」
自分ですら、禁忌だとわかっている行為をすれば、
自身の体は・・・・・・
「消えると思う。このまま・・・・・・魂自体が消滅して、生まれ変われるかも、わからない・・・」
「それって・・・!」
及川は口を開いた。