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Dearest〜最愛の君へ〜

第18章 最期の時間





何も聞こえないのに・・・
聞こえないはずなのに・・・

どうしてこんなに心が温かくなるんだろう。
涙が溢れてくるんだろう・・・


「そこに・・・っ、いるんだね・・・っ」


リオ・・・



歌い終わったリオは、にこりと微笑んでみせた。
そして、ミオの頭を撫でるようにして、ふっと姿を消した・・・


後に残されたのは、
及川と、涙ぐむミオと、そして穏やかな静寂・・・


「ミオ・・・」

及川は、ふわりとミオを包み込んだ。
柔らかい黒髪に、指を絡ませる。


「徹、くん・・・?」

「俺、ミオに出会えて良かった・・・本当に、本当に・・・」



リオの歌を聴いて・・・
背中を押された気がした・・・


"自分に素直に・・・"


リオが言ったその言葉が胸に宿る。


(リオは、俺の憧れだった・・・)



周りを笑顔にする魅力のあるリオに、何度も救われ惹かれた。

それは、なんというんだろうか・・・

まるで星に手を伸ばすように・・・
届かないとわかっているが、伸ばさずにはいられなかった存在・・・

そんなきらきらした存在が、リオだったんだと気づいた。



だとすると、この、目の前の少女に抱くのは・・・ーーー



「ミオ・・・」



及川は、体を離し、ポケットから何かを差し出す。


「・・・・・・・・・?」

「介護実習に行った時にさ、習字、あったよね?・・・実は、俺も書いてたんだ」



自分の人生を一文字で、というテーマだった。


「俺の人生を振り返ると、さ・・・」



ゆっくりと、4つ折りのそれを開いていく。


「っ!!」

「一文字じゃないけど、これしか思い浮かばなかった」





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