第18章 最期の時間
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「ありゃ、こいつは珍しい!ミオちゃんじゃねぇか」
「お久しぶりです、おじさん。お元気でしたか?」
「元気だよ〜、ミオちゃんこそ、相変わらずリオちゃんと瓜二つだね!リオちゃんかと思ったよ!」
ミオに連れられてきたのは、こじんまりしたライブハウスだった。
入口でミオと話す中年の、大柄な男性は、ミオのことをよく知っているようで、彼女が人見知りせずに話していることが及川は珍しいと感じた。
「ふふ、おじさん、近くに来たので、懐かしくて遊びに来ちゃいました。・・・ステージ、少し観ていいですか?」
「それは全然構わないけど、今日は誰も予約はいってないよ?」
大丈夫です、と言ってミオは慣れた様子で地下の部屋の鍵らしきものを貰った。
そして、慣れた様子で地下への階段を降りていく。
及川も後を追うようについていく。
「ミオ・・・ここって・・・」
階段を下りて突き当たりの扉の鍵を、先程借りた鍵で開けるミオに、及川が口を開いた。
「ここはね、リオの思い出の場所なんです」
鍵が解除され、重たそうな扉を開くと、目の前に広がるのは、
沢山の楽器やカラフルなライトに彩られたステージ・・・
ミオはゆっくりとその中へ入ると、ステージを背にして、及川の方を向いた。
「ここでリオは、沢山歌っていたんです」
「ここで・・・」
及川も部屋の中に入る。
静まり返ったステージには、ドラムやギター、キーボードの並ぶ中、真ん中にはマイクスタンドが置いてあった。
ここが、リオが夢を追っていた場所・・・
あのマイクスタンドを握りしめ、彼女は歌っていたのだろう・・・
「此処にいる人みんなのために、リオはいつも全力で、歌っていました」
客が1人だろうが5人だろうが20人だろうが、リオは歌い続けた。
自分の声が、心が届くように・・・
そんなリオの姿を、私が一番近くで見ていた・・・
今でも、この場所で彼女の歌声が聴こえてくるようだった。