第18章 最期の時間
デートは、いつものように映画や、買い物に行った。
普段と変わらない過ごし方だったが、移動中や買い物中、ずっと手を繋いでいるだけで、鼓動の打ち方が違う。
いつも楽しいが、今日はずっとずっと、幸せだと感じた。
傍から見たら、自分たちは恋人のように見えるだろうか?
ちらりと隣のミオを見ると、先程買ってあげたクレープを、美味しそうに頬張っている。
及川の視線に気づくと、上目遣いで彼を見上げる。
そして首を傾げて、クレープを差し出す。
食べます?とでも言いたそうに・・・
「ん、食べる」
及川は体を屈めて、差し出してきたクレープにかぶりついた。
「ん、うまいっ」
子供のように顔を緩ませる及川。
その笑顔を見ると、ミオは、どうしてか泣きたくなった。
そんな彼女の心境に気づいて、及川は目を細め、ぽんぽんと頭を撫でた・・・ーーー
百貨店を出ると、空は夕暮れ時を示していた。
街中が暖かなオレンジ色に染め上げられている。
及川は繋いだ手に力を込めた。
「ね、ミオ・・・?」
「はい?」
「今日はありがとうね」
楽しい時間が、終わりを告げようとしていた。
「ほんと、楽しかったよ」
いつもの休日を、恋人のように過ごしたくて誘った。
それが叶った及川は満足そうに、目を細めた。
すると、ミオは何かを感じ取り、思わず繋がれた手を握り返す。ほどけないように・・・
「・・・ミオ・・・?」
「徹くん、あのっ・・・」
"一緒にいってほしいところがあります!"