第18章 最期の時間
カチ・・・
時計の針が、進む音がした・・・ーーー
「へぇ・・・ミオ、まだあのブレスレット持っててくれてたんだ、嬉しいなぁ」
介護実習の間は、夜はレポートで忙しくリオは気を使って及川の元へは現れなかった。
実習を終えた夜、5日ぶりに見るリオに、及川は介護実習でのことと、ミオが昔リオから貰ったブレスレットを今もつけていることを話した。
それを聞くとリオは鼻歌を歌いだしそうなくらいに上機嫌だった。
「でも、徹くんちっちゃい頃私とミオのこと間違えたんだ〜」
「ちょ、それはしょうがないじゃんっ」
今でも見分けるのが難しく、
幼い頃なんて、双子だなんて知らなかった・・・
「今は?」
「へ?」
コンビニで買った缶チューハイを片手に、リオは言った。
「今はどう?見分けられてる?」
試すような、興味津々な大きな瞳で及川を見つめる。
「今は・・・」
及川は考え、口を開いて・・・
そしてへらりと笑った。
「どうだろ?雰囲気はそれぞれ違うけど2人とも、俺に一途な所は一緒だからなー・・・いてっ!」
敷いた布団の枕が飛んでくる。
避けると、頬を膨らませた顔のリオ。
「もうっ、聞いて損した!」
ぷんすかと怒る彼女に、及川はけらけらと笑った。
「ごーめーんって、冗談だよ、冗談」
及川は酒を置き、リオの目の前に立ち、視線を合わせるように屈んだ。
そして、へらりと笑っていた表情から一点して、真剣にリオを見つめた。
「2人ともよく似てる。似てるけど、やっぱり違うんだ。2人とも自由だし俺のこと振り回すけど・・・」
勝手に泣いて、勝手に怒って・・・
そんなふたりを・・・
「大切だって、思ってるよ」
これ以上ないくらい、想いが溢れている。
「徹くん・・・」
切なそうに目を細めるリオ。
及川は、彼女を包むように手を伸ばした。
「俺・・・明日、ミオとデートする」
何となく、分かるんだ。
多分、きっと、明日が
「俺の、最期の日なんだ・・・」
運命は変えられない。
だとしたら、最期・・・
俺は大切な人と過ごしたい。