第3章 新しい日常
《次は〜〇〇、〇〇に止まります。お降りの際は足元にお気をつけ下さい》
あっという間に、時間が過ぎ気づけば及川の地元の駅に到着しようとしていた。
(もう着いたのか・・・)
残念がる気持ちを隠せなかった。
「徹くん、この駅だよね、気をつけてね」
「うん、リオは終点までだったよね。気をつけてね」
そうして、席を立ち、リュックを背負う及川。
「そうだ、リオ、連絡先、教えてよ」
「あ、ごめん私、今日家に携帯忘れてきちゃってるから、また、今度でいい?」
手のひらを顔の前で合わせて申し訳無さそうに自分を見上げるリオ。
「そうなんだ、いいよ全然。いつも終電なの?」
「うーん、いつもじゃないけど、そうだね、終電が多いかも」
「わかった、じゃあ、また会えるといいね」
「うん、そうだねっ」
さよならするのが少し名残惜しいが、及川は開いた扉から外へと出た。
「おやすみ、リオ」
「ん、おやすみ〜徹くん」
ヒラヒラと手を振り合う二人・・・
電車が動き出して、お互いが見えなくなるまで、その手が止まることは無かった。
電車が去った後、及川は振っていた手を見つめ、それから先程までの心地よい時間を思い出した。
頭に残るのは彼女の笑顔や、明るい声。
「また、会えるといいな・・・」
そう、呟いてしまうくらい素直に、
及川は思ってしまった・・・