第15章 願えるなら僕は
次の日、頭を打った及川は1日ゲームを見学することになった。
家で安静にしろと言われていたが、折角の練習試合、チームの近くにいて、課題やその他のチームメイトの様子も、把握しておきたかった為、及川は部活に出た。
こう、見ているだけだとバレーがしたくてウズウズしつつも、練習試合は滞りなく終了した。
片付けを終え、及川は学校前で国見と合流する。
2人で駅前の居酒屋に入った。
「俺はビールかな、国見ちゃんは?」
「俺も生で。及川さん酒飲んで大丈夫なんですか?」
「んー、大丈夫なんじゃない?」
と、笑いながら話した。
暫くして酒と、注文した品が届く。
2人で囁かに乾杯したあと、今日の試合の事とか、チームのこと、秋リーグはどうしていきたいとか、まぁ要するに、バレーの話ばかりに花が咲いた。
酒も、二杯、三杯とグラスが空いてきた頃に、
国見が口を開いた。
「及川さんは、リオから死ぬことを告げられて・・・怖くなかったんですか?」
「自分が死ぬってことに?」
三杯目のハイボールを飲み終え、及川は尋ねた。まるで三時のおやつの話をするようにさらりと話す及川。
国見はこくんと頷いた。
「初めはね。人間、遅かれ早かれ死ぬんだし。俺は、今でもバレーを全力でやれてるし、思い残すことはないって思ってた」
本当に、あの頃は死ぬことが、どういうことか曖昧だった。
だから、怖くないなんて言えたのかもしれない。
だけど・・・
「・・・・・・・・・」
"及川さん!!"
脳裏に浮かぶのは、"彼女"の顔・・・
「ミオが俺のために泣いているのを見て、この子を笑顔にしたいな。これ以上泣かせたくないな・・・ひとりにしたくないなって思ったんだ」
感情表現が下手で、でも真っ直ぐに俺を想ってくれるミオ。
あの涙を見た時・・・
自然と腕が伸び、抱きしめていた。
この胸の中に、確かに生まれていた、愛しいという感情を、告げることはできないけれど・・・。