第14章 それぞれの想い
「ほんとっ・・・これで徹くんが死んじゃうんじゃないかって思うと、急に怖くなったっ」
子供のように泣きじゃくるリオ。
先程のミオと被る。
リオが、及川の死を望んでいないことがわかる。
自分が死ぬと分かっている人でも、いざという瞬間が来たら、こんな風に泣いてくれる人がいる・・・
そう気づくと、不謹慎ながら、心が温かくなるのを感じた。
「うん、リオも・・・心配かけてごめん、ほんと、ありがとう・・・」
リオの頭を撫でてやりたくなったが、伸ばした腕は、彼女の額ら辺を掠めた。
するとリオは泣くのをやめて、くるりと踵を返した。
「帰るっ」
「へ?」
「徹くんの意識がぷっつり切れる反応があったから、仕事ほっぽり出して来ちゃったの!だから仕事しに帰るっ」
背を向けてもなお鼻を啜り、強がるように言い捨てるリオ。
「じゃあね!」
そしてすっと消えていったリオ。
嵐が去った後のように静かになる空間。
及川は首を傾げた。
「何で怒ってたんだろ・・・」
「怒ってんじゃなくて、照れ隠しじゃないですか?あんだけ泣いてたら及川さんに自分の気持ちバレバレだと思うし」
興味無さそうに口を開く国見。
「え?リオが・・・?」
柄にもなく頬を染めて照れてしまう。
凄く心配してくれたのは・・・自分への好意の表れなのか・・・
「ま、俺はリオじゃないから分かりませんけど。あいつもミオに負けずに感情表現下手くそですからね」
「それ、国見ちゃんも人のこと言えないかんね?あと、よく知ってるね、あの2人のこと」
「自分が表情乏しいのは分かってますけど、言いたいことは言ってますよ?・・・まぁ、幼なじみですからね・・・」
そう言って手に持っていたペットボトルを取り出して水を飲む国見。そして改めて及川を向いた。