第14章 それぞれの想い
「あ、私、マネージャーに部費渡しに行ってきます!すぐ戻ってきます」
何とも自分たちが醸し出しているピンク色のオーラに耐えられなくなり、ミオはその場から逃げるように去った。
それと入れ違いになるように、体育館から声がかかる・・・
「及川さん、ちす」
後ろから、声をかけられる。
振り向くと、彼がいた。
少し青みのかかった黒髪が自然と真ん中で分かれる。
無気力そうな瞳の奥には、勝利を見据えて考える力を持っている。
午前中のゲームでも、後半からガンガン打ち込んできた・・・
「久しぶりだね、国見ちゃん」
国見英・・・
及川の、中学、高校時代の後輩。
「お疲れ様です、及川さんのトスワーク相変わらず凄いッスね」
「元・青城の主将にそう言われると照れるねぇ」
「いやいや、及川さんほどの主将ではなかったですけど」
大学はべつの大学に行った国見。今では大学のリーグで対戦する間柄だった。
「及川さん、今年で引退ですよね。バレーは続けるんですか?」
「うーん、そのつもりだけど、まだ正式に発表はされてないから言えないんだよね」
「そうなんですか、他の大学の四年生の進路も、公表されませんよね」
「そうだね、色々会社的にもタイミングあるから「英くん!?」
すると、突然声がかかる。
「え?」
顔を上げると、用事を済ませてきたのか、再びミオがそこに居た。
「え、ミオ・・・?」
国見が呟くようにミオの名を呼ぶ。
「わ、すごい、英くん久しぶり」
「編入したって聞いたけど、え、ここなの?」
ミオがちょこちょこと歩み寄る。