第14章 それぞれの想い
あの花火大会以来、再び及川とミオは連絡を取り合い始めた。
大学は夏休みに入ったため、お互い部活の時間はバラバラになる。
朝一緒に通学することは無いが、部活の前後、お互いの姿を見つけると話しかけに行ったりしていた。
そして、今日の練習試合の昼休憩でも、気づくと体育館の入口に、ミオの姿があった。
「おーい及川、彼女来てんぞー」
「だーかーら、彼女じゃないっての!」
そう言いながらも、及川は口角をあげて、ミオのいる体育館の入口まで駆けていった。
「あ、及川さん、お疲れ様です」
「もー、ミオ、何回も言ってんじゃん、徹でいいって!」
頬をふくらませて彼女の額をピンッと指で弾く。
「こないだな泣きながら呼んで・・・」
「わっ、こんな所で言わないでくださいよ!」
慌てて及川の口を手で抑えようとするミオ。
顔は真っ赤だ。
そんなあたふたした様子のミオを及川は楽しそうに見た。
うん、もうすっかり・・・いつものミオだ。
あの花火大会でリオとの過去を話してくれた日からも、少しずつ及川とミオの距離は近くなっていった気がする。
なんと言えばいいんだろう、彼女の隣が居心地いい。
全てを話してくれた彼女から、
信頼を得られている気がするからなのか・・・
「今日は1日練習試合なんですね」
「うん、女バレは隣で練習だよね?」
「はい、暑いから、倒れないようにしてくださいね」
はいタオル、と白いモコモコのタオルを貸してくれた彼女。
「ん、ありがとね」
そう言うと、照れたように綺麗な黒髪で顔を隠す。
あぁ・・・可愛いな、素直にそう思えた。