イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第36章 あんたが望むなら 後編 <徳川家康>
「その子は信長様の寵姫じゃない。勘違いしないでくれる?軍神の家臣も大した事ないね」
「……では、この女は一体なんだと言うのだ。まさか織田軍では、戦場に女を駆り出しているとでも?」
「違う!だけどその子は…」
「どちらにしても、試してみる価値はありそうだ。少なくとも、貴様には効果があるようだからな」
「っ!」
家康は苛立ちから愛刀をギリッと握り直し、謙信を見据えて構えた。
それを機に謙信が「おしゃべりはここまでだ。今度はこちらから行くぞ」と言い、素早く正面から向かってくる。
「くっ……!」
軍神と呼ばれるだけあって、謙信の繰り出す一閃一閃が家康に重く斬りかかる。
必死に受け止めながら、その重さに歯を食いしばった。
(なんて馬鹿力だよ!重心の乗せ方が上手すぎるのか……でも……っ)
家康は重たい刃を流し、そのまま一気に体を落として、勢いよく腰を捻る。
すると、謙信の脇腹辺りに鋭い熱が走った。反射的に身を捩り、致命傷には至らなかったが、その衝撃に一瞬だけ謙信の手元が緩む。
その隙を突き、家康は緩んだ手元を狙って、謙信の刀を弾き飛ばす。
「……っ?!」
謙信の愛刀が空を斬り、そのまま地面へと突き刺さった。
その様に、謙信は脇腹を押さえて距離を取りつつ、家康を苦々しげに睨み付ける。
「……信長の犬ごときが、なかなかやるではないか」
「あの軍神にそう言って貰えるとは光栄だね」
「随分と余裕だな」
「まさか。……余裕なんて無いよ。でも、誰しも譲れない時がある。」