イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18
第35章 あんたが望むなら 前編〈徳川家康〉
最初は偶然であっても、気にかけてくれて、心配してくれた、なんて……
(自惚れてた。……私、本物の馬鹿だったんだ。)
その事実が、深く深く胸に突き刺さる。
あまりの痛さに、は声を出さないよう、強く強く唇を噛んだ。
……がゆっくりと自室へ向かった頃。
家康もまた、昂る己の気持ちを堪えていた。
(……振り返れなかった。あの子の顔が、見れなかった……っ)
――きっと傷付けた。
最初から、自分で言えば良かったんだ。信長様の命で様子を見に来たって。
なのに、あの子があんなに……
「嬉しそうに、笑うから……」
ポツリと溢した言葉。
すぐ傍を歩いていた秀吉が、「家康?どうかしたか?」と声を掛ける。
けれど、ほんの一瞬俯いていた家康は、もう顔を上げていた。
「いえ、なんでもありません。早く、準備に取り掛からないと。」
「……ああ、そうだな」
ズンズンと、早足で廊下を突き進む家康。その瞳に燃えるような野心と獰猛な光を宿らせて、今は全ての後悔を身体の外へと追いやった。
唇を噛み締め、拳を握り締めながら――……
前編 終 (後編へ続く/次ページあとがき)