第8章 その肆〈信長ルート/艶有〉
信長を押し返そうとしていた両手の力を抜いて、おずおずと着物の裾を掴む。
すると、信長がピクリと反応した。
「抵抗せんのか?」
「……教えて下さい、信長様。どうしてそんな瞳をしているのか……」
「そんな瞳?……何の事だ?」
「気付いてないんですか?……先程から、時々、どこか哀しげな瞳をしていますよ」
「知らんな。……この俺が、何に哀しんでいると言うのだ。それに……貴様に俺の何が分かる」
「確かに、私には分からないです。分からない、けど…… 」
は、その先の言葉を続けられなかった。
自分が、何故そう思うのか、全く分からなかったからだ。
言葉を噤むを見つめながら、信長がそっと頬に触れる。
「分からないけど……何だ?」
「いえ……出過ぎた事を言ってすみません」
「俺の質問に答えろ。貴様は何を言おうとした?……全て話せ」
「だ、だから……私は、別に……ひゃっ?!」
が答えずにいると、信長は顔を近付け、の耳をペロッと舐めた。
突然の甘い刺激に、ビクッと肩を揺らす。
「~~っ!止め……て、下さ……」
「……貴様は本当に耳が弱いな。俺の質問に答えないのなら、仕置きをしてやる。早く答えた方が身の為だぞ」
「やっ……あっ……!」