第8章 その肆〈信長ルート/艶有〉
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天主に残ったは、秀吉の後ろ姿を見送った後、信長の方へ向き直り、震える自身の手をぎゅっと握る。
「震えているな。……俺が恐いのか?」
「いいえ、震えていません」
「……まぁいい。それで、話とは何だ?」
「!」
そう訊きながら、信長はとの距離を詰め、腰をグイッと引き寄せた。
は信長の胸を押し返しつつ、「取って食わないって言ったじゃないですか!」と抵抗する。
「食いはしない。……それとも、食って欲しいのか?」
「違います!だって、信長様が……っ!」
「……ただ抱き締めているだけだろう。先程まで秀吉に抱き上げられていたくせに、俺に触れられるのはそんなに嫌か」
「……それとこれとは……」
「答えろ」
「……っ」
「嫌なのか……?」
秀吉さん以外に、触れられたくない。
だから、当然嫌に決まってる。
決まってるのに―――……
(どうして?……声が出ない……っ)
そんなの様子に、信長はまた一瞬、哀しみの色を浮かべた。
そうして、もまた気付く。
(やっぱり、気のせいなんかじゃない。……どうしてそんな瞳をするの?)