第7章 その漆〈秀吉ルート/艶有〉
どうやら家康も本を返却しに来たようで、両手に本を数冊抱えている。
家康は秀吉を見た後、その隣に居る三成に目を止めて、あからさまに不機嫌そうな顔をした。
「秀吉さんは、また三成の世話焼きですか?全く……自分が借りた本を主君に返却させるなんて、とんだ忠臣……」
「悪い、家康!これも頼む!」
「は?」
秀吉は持っていた山積みの本を、家康の持っている本の上に、ドサドサッと重ねる。
「うわっ!」と、本の重さで前のめりになる家康の背中をポンッと叩き、「急用なんだ!後で必ず埋め合わせする!」と言い残して、急いで書庫を出ていった。
書庫の扉が閉まると共に、家康が体勢を崩して倒れ込む。
「家康様!大丈夫ですか?」
「ちょ、待て!足元……」
「わっ?!」
「?!」
足元に散らばり落ちていた本に躓いて、三成が盛大に転び、本棚の横に積まれていた本まで崩れ、家康は三成と一緒に本の山に埋もれてしまった。
ケホコホと咳をしながら、額にピキリと青筋が浮かぶ。
「…………」
「ケホッコホッ!い、家康様、大丈夫ですか?」
「お前はこの状況が大丈夫に見えるわけ?」
「何故だか積んであった本まで崩れてしまいましたね。今日中に片付けられるでしょうか……」