第7章 その漆〈秀吉ルート/艶有〉
「え?……が信長様に呼び出された?」
秀吉は、表情に焦りの色を浮かべながら、そう訊き返した。
秀吉の居る場所は、安土城の書庫。
側近である三成が、借りた本を返却するというので、世話焼きな秀吉は手伝いを買って出たのだ。
そして、の話は三成から聞いた。
三成は、信長の家臣と共にが天主へ行くのを、たまたま見かけたのだと言う。
三成は持っている本を、ぐしゃぐしゃと本棚に無理矢理突っ込みつつ、秀吉の問いに答える。
「はい。半刻程前でしょうか……家臣の者に連れられ、天主へと入って行くのを見ました」
「半刻前……今も、は天主に?」
「いえ、すぐに帰られたと思います。その後、私も報告があって天主へ行ったのですが、信長様しか居りませんでしたので……」
「そうか……」
秀吉は、ほっと安堵して胸を撫で下ろすが、やはり全ての不安は拭えない。ジリジリと焦燥が募り、身動き出来ずにいると――……
「あれ?秀吉さん……と、三成」
そう言いながら、書庫に新たなお客がやって来た。同じ織田軍武将の徳川家康だ。