第6章 その陸〈秀吉ルート/ちょい艶〉
「来たか」
――安土城。
天主に着くと、信長は高欄に軽く寄り掛かりながら、片手に空の盃を持っていた。
足元には漆塗りの丸い盆があり、その上に徳利が乗っている。
「……まだこんなに日が高いのに、もう呑んでるんですか?」
「俺がいつ呑もうと、貴様に指図される謂れはない」
「でも、公務の方は……」
「今日の公務は終わった。……そんな事より、。貴様、今日から秀吉の御殿へ住むそうだな」
「……っ!」
は、いよいよお説教が始まると思い、身体を強張らせて身構える。けれど……
始まったのは、お説教ではなかった。
「……あの阿呆は、答えを見つけ出せそうか?」
「え?」
「もし見つけ出せなかったら、貴様の事は責任を持って、この俺が一生可愛がってやる。だから安心しろ」
「……信長様」
「精々、次の満月までの一時を楽しむがいい。……今回はただの忠告だ。あの阿呆は、放っておいたら本当に気付かんぞ」
「!」
「惚れた男と一緒になりたければ、貴様がどうにかするんだな。……話はそれだけだ。」