第4章 その肆〈秀吉ルート/艶無〉
信長の言葉に、秀吉もも息を飲んだ。
2人は顔を見合わせて、明るく笑い合う。そんな2人の様子を見ながら、信長は話を続けた。
「秀吉。……ひとつだけ、貴様の言い分で気に食わん事がある」
「ひとつだけ?の事以外で、ですか?」
「ああ」
「申し訳ありません!その気に入らぬ事とは、一体……」
「……己で考えろ。その答えが出せぬ内は、貴様にはやらん」
「なっ……」
「猶予をやる。……次の満月までに答えを出せ。分からなければ、例えが貴様を選んだとしても、貴様の御殿には住まわせない。手を出す事も許さん」
「信長様!それは……っ」
「愛しい女を、ずっと指をくわえたまま見ていろ。そうして、貴様の望み通り、最期は俺の為に死ね」
その瞬間、にはすぐに分かった。信長が、何を気に食わないと言っているのか。
ただ―――……
(秀吉さんには、分からないかもしれない。秀吉さん、だからこそ……)
の予想通り、秀吉は全く分からないといった様子で、眉根を寄せている。
がチラリと信長に視線を向けると、パチッと目が合った。
その、ほんの一瞬だけ――……
信長の瞳に宿る、温かな熱。
いつもの冷たい瞳が、柔らかく細められていた。