第4章 その肆〈秀吉ルート/艶無〉
織田信長の居城である、安土城にて。
すっかり陽が昇り、そろそろお昼に差し掛かろうという刻限。
時折、階下から聞こえる音が、静まり返った天主に響いていく。
天主には、3つの人影。
安土城の主である、織田信長。
その忠臣である、豊臣秀吉。
そして、秀吉に抱き上げられている女、だ。
信長と秀吉は、一時も視線を逸らさず、お互いを見据えている。
しばらくの沈黙の末、先に口火を切ったのは信長だった。
「にも運命を選ばせろ、か。言うようになったな、秀吉」
「……無礼は承知の上です」
「先に言っておくが、俺は貴様を捨てる気はない」
「……はっ……?」
信長のその言葉に、秀吉はポカンとした顔をする。それまで張り詰めていた空気が、一瞬にして弾けてしまった。
秀吉は、殺される事さえ覚悟していた。元より己の命は、信長に捧げていたのだから。そうしてその忠義は、この状況を持ってしても、何ら変わらない。
信長は全てを見透かしていた。
秀吉の想いも。
ふんっと軽く鼻を鳴らした後、ニヤリと口角上げて言い放つ。
「貴様は俺の右腕にまで上り詰めた男だ。貴様を殺したとして、誰がその穴を埋める?」
「……信長様…っ!なんと勿体無いお言葉……っ」
「これからも俺の為に尽くせ。……先刻の話、受けてやる。の行く道は、が選ぶがいい」
「…っ!」