第9章 それぞれの気持ち
結局、芥川くんと距離をおこうと思ったにも関わらず、それができなくてずるずるとこの関係を続けていた。この関係、というのは、昼寝場所の提供っていうことなんだけれど、あの日、体を許してしまって、そのことを忍足くんは知っていて・・・
「んっ・・・」
「楓ちゃんかーわいい・・・」
いつものように芥川くんは昼寝をしにやってきた。2人っきりになれば甘えたように後ろから抱きつかれ、キスをねだる。後ろを振り向けば最初は優しく触れるようなキスをくれて、角度を変え、啄むように何度もキスをした。だんだん意識も蕩けていくと、かわいいと言ってくれる。
「あ、だめっ・・・!」
キスをされながら、芥川くんの手がブラウス越しに私の体を撫でるのを拒否すると、えぇ~!っと言いながら眉毛を下げた。
「誰かに・・・見られたら、困るし・・・」
「鍵なら閉めたし~」
「ここ、壁が・・・薄いみたいで・・・」
それで忍足くんに聞かれてしまった・・・生徒である芥川くんを求める声や行為の音・・・2人の“ひみつ”が。それを思うと芥川くんの顔がまともに見られずに目を泳がせた。
「楓ちゃん?」
「とにかく、これ以上は・・・ごめんなさい・・・」
「ん、わかった~、だからそんな顔しないで~?」
俯く私の顔を覗き込むと子どもをあやすように頭を撫でて、最後にくしゃっとされた。
「キスならいい?」
芥川くんのお願いは甘えん坊の子どものようで、その替わりようにはいつもびっくりしちゃうけれど、「いいよ」の代わりにキスを返すとぎゅっと抱かれ何度もキスをした。