第8章 仮面
口内に広がる苦味…吐き出す術もなくゴクリと飲み込むが口の端からは唾液混じりの飲みきれなかった白濁とした欲望が垂れる。
「んっ…ハァ…いっぱい……」
「ハァハァ…センセ、めっちゃ良かったで・・・?これで、授業受けられるわ・・・」
そう言って口から垂れる精液を拭ってくれた。机に置かれた眼鏡が視界の端に入り、自分が眼鏡をしていないことに気づいた。
「あの、眼鏡、掛けたいんだけど・・・」
「センセ、これ伊達やろ?なんで掛けてるん?」
私の眼鏡を手に取り光に透かして見てから掛けてくれた。これは、私にとって仮面のようなもの。掛けられたフレームに手を添え直してからそう言った。
「仮面・・・なんとなくわかる気もするわ。俺も伊達やねん。」
「え?そうなんだ・・・丸いフレームなんて珍しいわよね。」
「洒落てるやろ?センセーは、眼鏡外すと、なんや・・・雰囲気変わるんやな。そっちもええと思うで?」
身支度を整えながら、素顔の私を褒めてくれた。自分の素顔はコンプレックスだが認めてもらえたことは素直に嬉しいと思った。芥川くんも、いいって言ってくれたっけ・・・
そろそろ行こか、と差し出された手を握るとふわっと抱き寄せられた。
「今度はセンセーのこと、ようしたるから・・・」
今日のことはナイショやで?そう言って笑って見せるから、少し、ドキっとしてしまった。ドキッとしたことは、忍足くんにはまだナイショにしておこう・・・シルバーフレームの仮面の下にその気持ちを押し込めて、授業へと向かった。