第1章 はじまりの話
今は授業中。廊下は静かだ。
「さてと、どこから回ろうかな…」
学校案内の冊子を開き、マップに目を落とす。この階は3年生のクラスがあるようだ。
私は3年生の数学を担当するが、いかんせんクラスが多いため、もう1人の先生と受け持つクラスを分担している。もう1人の先生はベテランの女性の先生だ。
「H組まであるってことは…8クラスか。流石ね。」
そう呟きながら歩いていく。私は3年生のA〜D組を担当することになっている。
この先は音楽室、反対側が美術室。視聴覚室も各階にあるようだ。迷ってしまいそう・・・
敷地もとても広いが校舎もだだっ広い。廊下の幅だって普通の学校の2倍はありそう。
そんなことをしていると終業を知らせるチャイムが鳴った。
教室から出てくる生徒たちとすれ違いながら歩いていると、ガタイのいい男の子を携えて歩く男子生徒が目に入る。
"跡部様"と周囲の女子生徒たちが口にする生徒は、氷のような透き通る蒼い目をし、透明感のある男の子だ。黄色い歓声が上がり、女子生徒達も振り返って見ている。
"跡部様"、って…確か内定をもらった時に聞いたような…
改めて手元の学校案内に目を落とすと、生徒会のページに写真付きで載っていた。
跡部景吾、3年、生徒会会長、テニス部部長。
なるほどね。実物はオーラもあり存在感が半端無い。
「ほんと、すごい学校に来ちゃった・・・。」
ボソッと呟いた。