第1章 はじまりの話
「起立、気をつけ…礼。」
「はい、おはようございます。」
「着席。」
「今日から、産休に入った小林先生に代わってC組の担当を任されました、百瀬 楓です。担当科目は小林先生と同じ数学です、よろしくお願いします。」
サラサラっと黒板に名前を書き、生徒たちからは一段高くなった教卓から挨拶をする。そして一通り見渡す。
都内でも人気の高いお坊っちゃま、お嬢様校、そしてお洒落と名高い氷帝学園の制服を身に纏った生徒たちが、私に注目している。
前任の小林先生も挨拶をしていたようだ。新年度も始まってまだ1ヶ月、こんな時期に担任が変わったことに驚くような生徒はおらず、落ち着いている。
挨拶を済ませると、生徒からは「彼氏いるの?」「先生いくつ?」などと質問が上がる。"お坊っちゃま"と言えど、中学生らしさにホッとしつつ、適当にあしらってホームルームが終わった。
今日は担当授業がない日なので、学校内を周り、それから授業の準備をしようと決めていた。ちゃんと数学準備室も用意されている。
内定を頂いた時にも簡単に案内をしてもらったが、この学校、広すぎる。
早速学校案内を見ながら見て回ることにした。