第5章 理性
「では今日はここまで。今日はノートを集めますのであとで日直は持ってくるように。」
あれから数日。
何度か芥川くんは補習や課題をやるはめになったわけだけど、あれ以来キスをされることもなかった。やっぱり、単なるお礼であって、ドラマのような展開はないのだ。これが現実。
あの日の出来事で寝不足になったなんて、やっぱり自惚れていたんだと言い聞かせた。
「失礼しまーす、ノート持ってきたよ~手塞がってるから開けてくんない?」
日直がノートを持ってきたようで、ドアを開けてあげると、その言葉通り山積みのノートを持った芥川くんが立っていた。
私の机まで運んでそれらを置くと、大きな欠伸をする。
「ありがとう、そんな大欠伸して、やっぱり夜更かししてるんじゃないの?」
「え~だから夜は寝てるって~」
そう言うとソファに座ってまた欠伸をする。
睡眠障害・・・?専門家でもないからわからないけれど、学生で勉学に励むはずの時間にこれではやっぱり支障が出るのでは、と心配になる。
「部活は?」
「あるよ~でも今日は跡部も生徒会だから自主練~」
言いながら横になり、もぞもぞと動いている。少し寝かして~と言い終わるや否や、すやすやと寝息を立て始めた。