第3章 それはマシュマロのような・・・
「なになになに??楓ちゃん心配してくれんの???」
そう言って顔を覗き込まれ、クリクリっとした目がこちらを見ている。不覚にもドキッとしてしまい、先ほどと同じように名前は訂正した。
「心配よ、これから中間、期末試験もあるんだから・・・寝ていたらノートも取れないでしょ?」
「ノートなら、ほら!」
じゃーんと言ってテニス用の鞄から1冊のファイルを取り出して見せてくれた。どうやらノートのコピーのようだ。きっと周りの子も芥川くんの授業態度を見て心配しているのね・・・当の本人は目をキラキラさせて、得意げだ。
「まぁいいわ、次からは寝ないように、気をつけるのよ?」
「へーい!」
補習も終わり、芥川くんも伸びをしてからノートなどを片付けていると、あ!そうだ!っと言ってにこにことこちらを見たかと思うと、暖かく柔らかい感触に一瞬、何が起こったのかわからなかった。
「今日のお礼だC~」
口角をいっぱいに上げて笑い彼は出て行った。
その場にへたりこんでしまった私は、マシュマロのような甘くて柔らかい感触の残る唇を押さえることしかできなかった。