第2章 真っ直ぐなアイツと歪んだワタシ
片道30分、学校に着く頃にはほんのりと汗が滲む。
「毎朝よく頑張るなー」
校門を過ぎたところで同じ部活の東峰に声を掛けられた。
「おはよ、さすがに3年も続けてれば慣れるでしょ?」
「まぁな~、でも俺には無理だな」
「うわっ、ちょっ!? 何すんの!!」
ワシャワシャと東峰の大きな手が私の頭を豪快に撫でる。
「丁度いい高さだからな♪」
「どうせ私はチビですよーだ」
東峰と話す時はいっつも見上げなくてはいけない。
30センチも違えば当たり前なんだけれども。
東峰は烏野高校男子バレー部のエース。
いつもは頼りないことの方が多いけど、やる時はやってくれる。
一時期バレーを避けてた時期もあったけど、それでもまた帰ってきてくれた。
私がそんな東峰を特別視するようになったのは、いつからだろう。
でも、東峰の視線の先にはいつもチカが居るから……。
だから私は、毎日のこのちょっとした時間のために少しだけ早起きしている。
これは私だけの秘密。