第9章 幸せまでの時間
皆と別れ、孝支の部屋へ向かった。
お互い別々の部屋に住んではいるが、週末はよく行き来している。
「孝支、いつの間に指輪なんて用意してたの? サイズもピッタリだし!」
「内緒♪ あー、久しぶりに緊張したー!」
「へへっ、ご苦労さまでした♪」
「おう、サンキュ」
冷蔵庫で冷えていたビールを2つ、1つを孝支に渡しながら隣に腰を下ろす。
「ミカの家にも、挨拶行かなきゃなー」
「お父さんびっくりするよ!」
「殴られたりしないかなー?」
「そんな事しないよ? 2人とも孝支のことよくわかってくれてるし、大丈夫だよ♪」
「だといいけどなー」
そんな他愛もない話をしつつ、時折左手の薬指をチラチラと見やる。
「そんなに見てると、消えて無くなっちまうべ?」
「え!? そんな事ないでしょ??」
「無くなったら、今度はちゃんとしたの渡すよ」
「ん…………うん……」
触れるだけのキス。
指輪がそこにあると言うだけで、今までとは違うものに感じてしまう。