第6章 妖界へようこそ!!
今日は生憎の雨だ。
でもザーザー降りという訳ではなく小雨程度。
そして現在、私は家の玄関にいた。
「ごめんなさい廉ちゃん。折角遊びに来てくれたのに、お家に一人にさせちゃって……」
『いいよ、楽しんできて!』
今日からおばぁちゃんは、老人会の二泊三日の温泉旅行に出掛ける。
私が此処に泊まりに来る前にはもう決まっていた話だった。
しかし一人暮らしの練習にもなるという事で、私はこの家にお留守番する訳となった。
バスの後ろ姿に手を振り、見えなくなると一人家に入った。
「廉ちゃん聞いてないよ!家に一人で留守番するなんて!」
『別に教える事でもないかなーって』
「教える事だよ!!廉ちゃんの身の回りの情報も、なるべく知っておきたいし!」
『……ストーカー』
「ちがーう!!」
手を腰に当て上目遣いで怒っているのは、雪女(男である)のトド松だ。
この夏休み、田舎のおばぁちゃん家に遊びに来てからというもの変な妖6人にまとわり着かれている。
その理由は私の"霊力"が、何かの悪い組織に狙われているからだと聞かされた。その使い道はこの村の昔話に関係しているとか…
「ちょっと聞いてるー!?」
『はいはい、聞いてるよー』
「いや雑か!?……まぁ、良いけど。そうだ、今日廉ちゃんは何か予定とかってあるー?」
今度は小首を傾げての上目遣い。
その一々上目遣いをするのは何だ……
『特に無いけど』
「本当!!良かったー!じゃあ、今日は僕とデートしよっ!!」
『……デート?嫌だよ、しかもこんな雨の日に』
「えー、何で僕とだけしてくれないのー?おそ松兄さん達とはしたのに?」
『それはデートじゃない!!お使いに勝手に付いて来ただけ』
あ、でも十四松とはお使いに関係なく、川に遊びに行ったな……デートではないが。
「本当かなぁ?…でも今日はする事無いんでしょ?僕が良い所に連れていってあげる!」
『何処にそんな所が……』
「フフフッ…"妖界"にデートしに行こう!廉ちゃん!」