第5章 探し物
「行っちまったな……さ、俺達も帰ろーぜ」
『うん、全速力でね』
私はまだお使いの途中。鍵を烏に取られゴタゴタに捲き込まれ、そして今は夕方。
おばぁちゃん、心配してるよなぁ……
「りょーかい!ほら、早く乗れよ」
『変な気起こさないでよ』
「……ゼンショシマス」
一応念を押しておく。一応ね。
おそ松は私を抱え直すと、風のように駆け出した。森から抜け出るのは、そう時間は掛からなかった。
私はおそ松か下りると、お使いの物に気を配りながら急いで神田さんの家へ向かう。
ピンポーン
"はい"
『こんちはー、廉です!』
"お使いで来ました"ーと言うと"今出ます"と短く返事を返された。私はパッパと身なりを整えた。
ガチャとドアが開き、玄関から出て来たのは翔太君だった。
隣にいたおそ松から"あっ"と言う驚きの声が聞こえた。
「何の用?」
『え、あぁ、これを届けに来ました』
と、持っていた袋を翔太君に渡す。
なんか、イラついているように見えるのですが……なにかあったのかな?
「あー…タッパか…って、何でそんなに汚れてんの」
『えぇ、っとこれはちょっと、転んじゃって…!』
「転んだ?随分派手に…痛っ!!」
翔太君に翔太君のお母さんのチョップが炸裂した。
「あらあら廉ちゃんいらっしゃい!随分遅かったわねー」
『す、すみません!!来る途中に鍵を落としてしまって探してたんです』
「そうなの!?言ってくれれば一緒に探したのに」
『ああ、でもちゃんと見つかったので大丈夫です』
"バカだなー"と翔太君が言って、またチョップが炸裂。
翔太君のお母さんからお礼のお菓子を貰って、私達はその場を後にした。
『そう言えばさっき、翔太君を見てビックリしてたみたいだけど何かあったの?』
「うーん、ちょっとな。昔の知り合いに似てただけだ」
昔の知り合い。翔太君に似た妖がいるってこと……?
「えぇ?ナニナニ、もしかして今俺の事考えてたぁ?」
『考えてません。何時になったらおそ松達がいなくなってくれるかなって考えてただけ』
「本当かなぁ?」
一々面倒くさいな、この妖は。
明日もまた一癖のある妖が来るんだろうなぁ。