第7章 ※出会いと別れ
『……一松?どう…したの?』
「どうしたって此方の台詞だ!!何だよその匂い…!!」
『匂い…?』
私には分からない匂いを一松は感じ取っているらしい。一松はヤバいヤバいとぶつぶつ呟いている。
私の身体の熱はまだ収まらず、下腹部の奥の変な感じが更に強くなっていく。
こんなの…どうしたら……
「……廉っ誰かに変な術とか…掛けられなかった?」
『術っ……?』
その時パッと思い出したのはあの言葉。
"最後の夜を楽しむと良い"
あれか……!!
私が咄嗟に思い出したのは、今日鬼達に捕らわれている時に来た名も知らない黒い妖。
確かにその黒い妖はこの全身の熱の始まりである、左の鎖骨辺りを触れていた。
その時は痛みも小さく、大した事ないと無いと思った私はトド松にその事は話していなかった…
私は着ていた服の襟を捲ってその箇所を確めるが、丁度死角で見えなかった。
「それ…!!」
鼻を抑えた一松が反応を示した。
「黒い松の紋様……チッ、余計な事を……!!」
舌打ちをした一松は鎖骨から私の方に目を向けた。私はよく分からず、そのまま一松の目を見た。
すると一松は鼻を抑えていた手を離し苦しそうに何かを決意した表情をして大きく息を吐いた。
「……ごめん、俺のこと嫌いになって良いから…」
『……っ!』
一松はそう呟くと、私に覆い被さった。
『……ちょっ、一松…!?』
速まる鼓動が煩い。熱さで目が眩む。
そんな私の目の前には、紫色の眼を光らせた獣。ゾクゾクとした感覚が全身を駆け巡る。
『…まっ…』
言葉を発する間もなく、それは一松によって閉ざされた。唇に触れる柔らかいもの。
口内には一松のざらついた舌が侵入し、私の舌を絡め取った。
その刺激は一松の肩を押し返していた手の力を意図も容易く奪う。
『…い……はっ…ん』
言葉を発しようも一松に直ぐ塞がれてしまう。
このまま窒息してしまうのではないか。そう思った瞬間、一松の舌がやっと離れた。息が絶え絶えな二人の間を銀の糸が繋がる。
私は息が切れながら、まだボーッとする頭で一松を視た。一松もまた息切れをしており、それが落ち着く間もなく私の首に唇を押し当て、私の服の中に手を入れた。
スルスルと肌の上を滑る一松の手にくすぐったいとはまた違った感覚を覚えた。