第1章 鈴の音
あなたは"妖(あやかし)"と言うものを信じますか?
と言うのも、私は小さい時からこういう類いのものが視えてしまう。
どうやら母方の遺伝らしく、ホンっっトに厄介なものを継いでしまったなと思う。
お陰で小学、中学と友達が一人もいなかった。
嘘つきで変わり者というレッテルを貼られてしまったからだ。
しかし今私の通っている高校では、この事を皆に隠して過ごしている。お陰で仲の良い友達もなんとかできた。
「あのさ~、今度一人でお母さん家に行って来てくれない?」
ふとキッチンにいたお母さんが私に声を掛けた。
お母さん家…まぁ私の祖母の家と言うわけだ。
因みに祖母は視えていた人で、今はもう視えないらしい。
『え?…別に、良いけど。何で一人で行くの?』
私は少し驚いて聞き返す。
いつもなら、夏休みと正月に家族3人で行くはずなのだが…
「ごめんね。お母さんとお父さん、仕事の都合で行けなくなっちゃったの。」
仕事か、それは仕方がない。
でも、おばあちゃん家まで一人で行けるのかが心配だ。
「交通費はちゃんと渡すから…あー、あと、向こうには2週間お願いしてあるから。」
『あーうん……って、2週間!?』
「そうよ?だって廉、部活に入ってないし…アルバイトもやってないし、たまには自然豊かな所でゆっくり過ごすのも良いんじゃないかなぁって。
だから、それまでに宿題終わらせた方が良いかもねー。」
いやー…いやいやいやいや。
2週間は長過ぎでしょ。
まぁ、おばあちゃん家好きだし良いけど。
私は"分かった"と一言返事を返して、お風呂に入ろうとソファーから立ち上がった。
宿題かー…
宿題ねー…
頑張って、終わらせよう。