第1章 ルカBDSS【知り過ぎた日】
アリスはその後、さりげなくルカと合流し、会話の流れで好きなことや欲しいものの探りを入れてみた。
ところが
みんなの言っていた通り「別に…」「特にない」などの答えしか返って来ず
アリスは会話から聞き出す作戦を諦めた。
(どうしよう……)
翌日、ひらめきを求めてアリスはセントラル地区へ買い物に出かけた。
(ルカが好きそうなもの、売ってるかな……)
メイン通りを抜けて裏通りへ差し掛かると、小さな雑貨屋を見つけた。
(あれ、こんなところにお店がある)
薄暗い店内には魔宝石を使った様々な雑貨が並んでいた。
お守りや置物、飾りの類が多く、どれも美しくて見惚れてしまう。
(素敵…)
ふと視線を落とすと、アリスの手元に不思議な色をした石が並んでいた。
(なんだろうこれ…)
手にとって眺めてみる。
「それは『相手の心がより深く知れるまじないグッズ』じゃよ」
「きゃっ!!!」
突然背後から声がしてアリスはびくんっと肩を震わせた。
老齢の店主が説明してくれた。
「その石を手に乗せて、両手を相手と繋ぐ。するとたちまち相手の心の奥深くを知ることになるじゃろう」
「すごい!本当に効きますか?」
「もちろんじゃ。あまり気持ちを伝えない奥手な相手にピッタリじゃろうなぁ」
(すごい!こんなものがあるなんて!)
アリスはすぐにその石を買った。
(これをルカに使えばきっと何が欲しいのか分かるはず!)
ルカの気持ちが知れること、そしてみんなの役に立てることが嬉しくてたまらず、アリスはウキウキした気持ちで帰っていった。
その日、ルカは任務が長引いたせいか夜中まで戻らなかった。
(ギリギリになっちゃうけど、明日の朝すぐに試してみよう)
ベッドサイドの上にある不思議な石を見つめながら
アリスは眠りについた。
翌朝。
少し早起きをしてキッチンへ向かうと
予想通り、ルカが調理場に立って朝食の準備をしていた。
「ルカ!おはよう!」
「!……おはよう………早いんだね」
ルカは一瞬驚いていたが、すぐに優しく微笑んだ。
「あのね、ルカ、お願いがあるんだけど」
「…何?」
「両手、出してくれないかな…」
「え?」
(我ながら変な頼みごとだけど…こればかりは仕方ない!)