第1章 ルカBDSS【知り過ぎた日】
8月24日。
まさかこんなことになるとは思わなかった。
この世界の「魔法グッズ」を少々甘く見ていたらしい…。
(どうしよう………)
アリスは目の前に広がる信じられない光景に愕然としながら途方に暮れてしまった。
時を遡ること8月22日。
ルカを除く幹部とアリスが執務室に集められた。
「大事な会議って聞いたけど…私も参加していいの?」
「ああ……ていうか、お前の力が必要」
レイの射抜かれるような目にドキリとする。
「夜のパーティは例年通りの手筈でいいんだよな?ボス」
シリウスの言葉にレイがうなづく。
「夜のパーティ?」
アリスが小首を傾げ尋ねる。
「アリスちゃんは初めてだったわねー?実は明後日、8月24日はルカの誕生日なのよー!毎年パーティをしてお祝いしてるの」
「そうだったんですね!」
(だからルカだけいないんだ)
「そこで、アリスに頼みがある」
レイの真剣な声が響いた。
「私にできることなら何でも言って!」
(ルカにはいつも美味しい料理を作ってもらったり、買い物に付き合ってもらったりしてるし、普段のお返ししたいな)
「実は、ルカの奴いつも欲しいものとか好きなもの何にも言わねーんだよ……祝っても、嫌がってはいねーけど喜んでるのか正直分かんなくてさぁ」
フェンリルが話し始めた。
確かにルカはあまり感情を表に出さない。
先日の買い物の時も「行きたい場所ある?」と聞いても「あなたの行きたいところでいい」と答えていた。
「毎年祝ってる俺たちが聞いても同じだろうから…お前から探り入れてくれない?」
「えっ、私?」
長年の付き合いのみんなにさえ話してくれないのに、自分に話してもらえるのか……アリスは少し疑問だった。
「頼む!この通り!」
しかしみんなにこう頭を下げられると、断ることはできなかった。
「う、うん!わかった!やってみるね!!」
「ありがとな、お嬢ちゃん」
「悪い。頼んだ。当日までに分かったら俺たちも協力してプレゼント用意するから、言って」
レイか柔らかく微笑み、アリスは力強く頷いた。
「よーし!そうと決まれば、後はいつものパーティの準備、打ち合わせするわよー!」
セスの号令で話し合いが再び始まった。