第32章 ep6 繋心のワルツ
一体、
自分は何処へ向かっているのだろう…
気がついたら会場を飛び出し、この美しいイルミネーションの庭まで走ってきた。
ただ、あそこにいたくなかった。
見たくなかった。
ユウが、知らない女(ひと)と踊っている所なんか。
12月の肌寒い冬風が白いドレスを貫いていく。
けれど、その肌に容赦なく刺さる痛みよりも、この胸に渦巻く心の痛みの方が、現実味を感じた。
「!」
の腕を、誰かが背後から引いた。
「やっ…」
まだ進もうと心は思うが、腕を掴む力は強く、は仕方なく抵抗するのを止めた。
そして滲んだ涙を拭い、俯いた。
「…ヒールなのに足速ぇから焦ったさ」
と、荒い息を整えながら赤髪の青年:ラビは言った。
「………」
「こんな所いたらまた熱出すさ?早く屋敷に…」
そう言いながらラビはの腕を引く。
けれどは無言でそれを振り払う。
「……っ…」
ラビは息をついて、涙を溜めている少女を見つめた。
何かを必死で我慢しているような、痛々しい表情…
それが溢れるのを拒むようには夜空を見上げた。
「わかってた。私なんかがあの人とは釣り合わないって事くらい」
「………」
「綺麗で、沢山の人から好かれそうだなって、最初はそんな風に思ってた」
淡々と話す。
けれどそこから、彼女の表情は一点して曇ってしまった。
「でも時間が経っていくうちに、あの人の事が、どんどん頭に浮かんで……側にいたいって思うようになって…っ」