第30章 ep4 皆が変わる日
“遊び心だったら…あんなに必死に…他人の為にはしないと思います”
昨日、この少女が言った言葉…
ティキの脳内にはずっと、この言葉がフレーズのように響き続けていた。
(あんたも旦那の事、好きじゃなかったら…あそこまでしないだろうが…)
はぁ…と、ため息をつく。
何故自分が他人の事を思わなければならないのだろう?
(そりゃあ…稀に見る美人だけど…)
そんな女達は山ほど相手にしてきた。
けれど、は他の女達とは違う…何か原石的な輝きがあった。
その輝きが、自分を含め…この屋敷の住民の心を集めているのだろう。
「じゃあな、俺ら帰るわ」
思考を振り払うように、ティキはに背を向けた。
「え…帰るって…?」
「首都の僕ん家~。ユウの事は諦めたから、もう此処にいる必要なくなっちゃったからね~」
ひょいっとティキの肩から飛び退き、ベッドのに歩み寄る。彼女はとても淋しそうに眉を寄せていた。
「また、逢える…?」
にとって、ロードは妹みたいな存在だった。
ロードにとってもは、姉のように思えた。
(人に負けるのって、ちょっとムカついちゃうけど…にならしょうがないって思えるよ)
「うん」
ロードは再びに抱き着いた。
「元気でやりなよぉ~」
他人の事を思ったのは初めてだった。
「うん、ありがとう…ロード…」