第29章 ep3 貴族の事情
―――…
「………」
薔薇を抱いたまま、ロードは呆然とユウを見つめていた。
ユウもそんな彼女を見下ろしている。
「何か…」
「ユウとは、付き合ってるの?」
ロードは尋ねた。
「いいえ」
間隔空けずにユウは答える。
「ただの使用人と主ですが」
「ふぅん…」
「では、失礼します」
ユウは一礼して、ロードの横を過ぎていった。
「………」
沸き上がる怒りに、ロードは薔薇の花をくしゃりとと握り潰した。
棘が刺さり、血が流れる。
「ミャーォ」
ロードの足元に、飼い猫:チェシャーが歩み寄ってきた。
「………」
ロードは、口端を吊り上げた…