第18章 何度も 神田切裏
地元・オーストラリアの街に住むはその日、柄の悪い男達に狙われた。
その時、月を背後に従えた彼は、一人残らず男達を倒した。
はその様子を腰を抜かして見ていた。
(北の人…?)
月光のせいか、そのすっとした横顔が白く輝いていた。
自分達のような赤道近くの国の人間とは違う肌の白さ。
こちらを向くと、その切れ長の瞳は真っ直ぐを向いていて印象的だった。
「おい」
すると青年と言える程の男はを見て口を開いた。
「はっはい…っ」
は落とした鞄を拾い上げ、立ち上がった。
「女がこんな時間に出歩くんじゃねえ…物騒だ」
そう言って青年はの前を過ぎようとした。
「あっ、待って!…ありがとう、ございました…」
咄嗟に彼の腕を掴み、過ぎようとした青年の足を止めた。
「こんな目に会いたくなかったら二度と此処に来るんじゃねぇ。
まぁ、襲われたいんなら余計な世話だったか?」
「…なっ」
かちんときて口ごもる。
すると青年はニヤリと笑い、冗談だ、と言ってまた足を進めた。
「自分が美人だって思うんなら、早く帰れ」
「…ぇ…?」
とても満面笑顔とは言えないが、その顔がとても綺麗で…
はしばし呆然としていた。
すると先程の表情と打って変わり、恐ろしい険相で睨んで来た。
「テメェ…そんなに襲われたいのか…」
どすの効いた声にはっとしては足早に歩き出した。
「っあの!」
振り返り、は言った。
「名前、教えてくれませんか?私、って言いますっ」
助けてくれたから、と尋ねるに、青年は言うまで帰らないだろうと推測し、息をついた。
「…神田だ。ユウ・神田…」
(日本人…?)
「わかったなら帰れ、5つ数える内に此処を去らねえと、切る」
日本刀だろうか、それに手をかけて神田は言った。
は目を見開いたが、彼が本気の目をしているのに気付き一目散に駆け出した。
「…ふぅ…」
「ユウ!」
静寂した路地通りに、少女の声がよく通った。
やれやれと神田が振り向くと、オーストラリア人の美少女は手を振っていた。
「…また、会える!?」
そう、尋ねた。
神田はおかしな事をする少女に隠れて小さく笑った。
「…馬鹿な女…早く帰れ、馬鹿」
「約束ね!」