第17章 恋愛写真 クロス切裏【HEAVEN番外編】
5年前、
貴方に逢った日は雨でした…
私はまだ18で、
貴方に出逢わなければきっと…
貴族の籠から抜け出せなかったでしょう…
あの、船で出逢わなければ…
―――…
これは何、何なの?
雨雲が空を覆う。
そこに浮かぶ不気味な影…
それらは自分のいる船に向かって攻撃してきた。
「!早くこっちに来なさい!」
貴族の父が、看板に座り込んでいる娘に向かって叫んだ。
けれど少女は迫り来る恐怖に、そこから動けずにいた。
「!」
悲鳴にも似た母親の声に顔を上げると、黒い恐怖の塊がすぐ近くまで迫っていた。
筒のような場所に光が集まりだした。
は硬く目をつむった。だが彼女はふと思った。
(どうせ生きていたって、楽しい事なんてない…)
貴族とは金と権力を使って庶民を苦しめたり、自分達の遊びにほうける最低な奴らだ。
自分にも、その劣悪な血が流れている事がにとって最大の苦しみだった。
(別に、好きで貴族に生まれたんじゃなかった…)
自分は政略結婚で結ばれた父と母の、大事な玩具。
屋敷を繁栄させるために、あのだらしの無い男と結婚するために在る…
ただの、人形――…
(そんな人生なら…)
捨ててしまえばいい…
は貴族の鎖から解放される喜びに、僅かに笑みを浮かべて瞳を開いた…