第16章 HEAVEN クロス切裏
――泣くなと言っただろう…
「!?」
は顔を上げ、辺りを見渡した。
けれど、確かに聞こえたその声がどこから聞こえたのかはわからない。
は立ち上がった。
すると…
カツン…
ポケットにしまっていたオルゴールが地面に落ちて、その拍子に蓋が開いた。
そしてまた、セレナーデが流れる
まるで、彼が生きていると、証明するように…
そうだ。
信じるんだ…彼を
彼はきっと生きている。
遺体が見つからないのなら、きっとまたふらりと現れて私を驚かせるに違いない。
だから…私はあそこにいなくちゃ
あの店で、彼の帰りを待たなくては…
それが、今私にできる事。
信じる…それがすべて…
その夜、はクロスが手配した馬車に乗り、祖国への帰路に着いた。
長い長い道のりを、夜空の下を、馬がいく。
人は、歩き出さなければ始まらない。
貴方が死んだという事を偽りにする為には、私が動かなければ。
そして、時が経ち…貴方が再び現れるなら、私は何度も言う…
ずっと、側にいて、と…
そしたら貴方はいつもの笑みを浮かべて…
私にキスを下さい。
クロス様…
薄れゆく意識の中で、
貴方は天使のように微笑んでくれた…
そして眠る私の傍らに残したもの
貴方は、その意味を知っていたのですか…?
貴方が死んだ事は、私は認めません…
けど、優しく私を照らす星は…
まるで貴方のように優しく光っているのです…
向日葵の、花言葉のように――…
私の目は あなただけを見つめる
ずっと……
…End