第16章 HEAVEN クロス切裏
ーーー・・・
コンコン…
「失礼します」
「…貴女は…」
昨日の長身の女性…
「マホジャ、と言います」
マホジャと言う女性は、に近づいて来た。
は此処の店主が恋人を取られた自分を呼んでいるのかと身構えたが、マホジャは目を反らし、クロス様が…と言葉を濁らせた。
―――…
マホジャの話を聞き終え、は呆然と、クロスが旅立った港を歩いていた。
漁業をしている人々は、そんな彼女を幾度か振り返り、彼女の持つ天性の雰囲気に見とれていた。
けれどはそれに気付く程、心にゆとりはなかった。
ほんの数十分前、は幸せで幸せで…仕方がなかった。
自分は世界で一番幸せな女と言われても過言ではなかった…
マホジャという人物からの、クロスの知らせを聞くまでは…――
「クロス様…」
呆然と、向日葵を握りしめ、は呟いた。
嘘でしょう…?
そんな…
貴方が死んだなんて…
クロスを乗せた船が、朝方アクマの襲撃に遭い、沈没したと…
そして彼の遺体は見つからずに行方不明…
そんな…何かの間違いだ
彼が…そんな…
朝、いつもみたいに微笑んで…
旅立ったじゃない…!!
「ふっ…ぅ」
堪え切れず、私はその場で身体を折り、泣きわめいた。
人目も気にせず…ただ…ただ…
胸が張り裂けそうで…っ
こんな時、貴方なら…私の頬を撫でて、唇を奪うのでしょう…?
奪いに来て下さい…今すぐ…!
私に、その余裕な笑顔を見せて…
側にいて…お願い…っ
愛しい人…
やっと…貴方と想いが通じたのに
さよならなんて…っ