【テニプリ】a short story.【短編集】
第10章 【跡部】Have a blast!
「は!?」
「まぁっ…!」
「え!?あ、あたし何か…!!」
また美人二人に凝視されてあたふたしていると。青筋を浮かべた跡部が口を開いた。
「誰が、誰の何だって?」
「だ、だから…あとべの、おねえさん…?」
「そう名乗ったのか」
「いいえ、まさかそんな。そこまでは流石に言えないわぁ…うふふ!!」
とっても嬉しそうに、頬を赤らめて喜ぶお姉さんと対照的に、跡部は更に青筋を深くする。
「何言ってんだ、年甲斐もなく。なぁ、母さん」
「うふふ、だって嬉しくて」
「は!?お、おかあさん…!!?」
「うふふ、ねぇ千花ちゃん、いつでもうちに来て下さっていいのよ」
「おい、更に混乱させるのはやめろ!」
お母さん!?という事はどれだけ若く見積もっても、15歳のあとべを産むためには30代半ばあたり――そういえば跡部は一人っ子だ、と漸く思い出す。
「ったく…もう皆帰ったんだろ、まだ料理は残ってんのか」
「えぇ、勿論。足りなければ用意させるから、大丈夫よ!好きになさい」
「…有難う、母さん」
そう言うと跡部はケータイを取り出し、徐に呆気に取られたままの私の写真を撮った。
「ちょ、何、いきなり…!」
「アーン?言うなれば、餌だ」
「は、エサ?」
訳が分からないまま、跡部のケータイを覗き込む。しかし跡部はそこに写る私を見ると顔を顰め、また徐に着ていたジャケットを脱ぎ去ると私の肩に被せた。そして写真を撮り直し、ぱぱっと操作を終える。
「な、何なの…?」
「その内分かる。ここは冷えるから、中に戻るぞ」
跡部は先にたって歩きだそうとする。しかしお母さんにくい、と襟元を引かれ、首をがくっと歪め立ち止まった。
「ぐっ…はぁ、一体何だよ」
「ちょっと景吾、千花ちゃんの足元を見なさい?貴方それでも大人の男性なの?」
跡部は私の足元に目を落とすと、一つため息をつく。それから、訳が分からずオドオドとする私の手を取り、エスコートするように促すと、今度こそゆっくりと歩き出した。まるで私が饗されているような丁重な扱いに、頭がついて行かなくて跡部を見上げる。
跡部は複雑な表情でこちらを見ていた。