【テニプリ】a short story.【短編集】
第10章 【跡部】Have a blast!
「あの、ごめんね、いきなり来ちゃって…と言うより、通りかかっただけなんだけど」
「いや、それは構わねぇよ…どうせあの人に無理やり連れて来られたんだろ」
未だに怒っているのか何なのか、複雑な顔の跡部に不安になり、唇をきゅ、と噛むと。跡部がそれを見咎めるように、こちらを小さく睨んだ。
「…俺様がさっき、水色のドレスが良いだの、化粧をしねぇ方が良いだの言ったが」
「え?あ、うん。言ってたね」
「あくまで比較の話で、今が悪いって言ってるわけじゃ無いんだから、誤解するなよ」
その言葉に、ぐっと熱がこみ上げる。何と返していいかわからず、思わず俯くと。
「うふふ、青春ねぇ」
なんて小さく呟きながら、お母さんが高いヒールにも関わらず颯爽と歩いて、私たちを追い抜いて行った。その言葉にも更に集まった熱をどうにかしたくて、跡部の方を見てみると、跡部も心做しか赤くなっているように見える。
私も、お母さんのように。褒め言葉を素直に受け止められる、ピンヒールの似合う大人になれるだろうか?そう、跡部の隣に、並んで立っても恥ずかしくないような…でも、その前に。
「あとべ、誕生日おめでとう」
「…ありがとよ」
すっかり忘れていた、お祝いの言葉をかけると、跡部が今日初めての笑顔を浮かべた。
それからもゆっくり歩いて邸内に戻ると、駆けつけていた忍足やがっくん、テニス部のメンバーが待ち受けていて。思い切りからかわれた後、誕生日パーティーが始まる事を、まだ私は知らない。