【テニプリ】a short story.【短編集】
第10章 【跡部】Have a blast!
我ながら自分に引いてしまう。これが恋の病なんて物のせいなら最早重症だし、病どころか呪いだ、とすら思う。どうせ会えないのに、と思いながら壁伝いに門の方へ向かい、角を曲がる――その先、細身の身体に薄紫のロングドレスを着こなした女性と目が合った。
思わず、凍り付いたように動けなくなる。大きな目は、私を見止めたと思しき後、何故か逸らされずじっとこちらを見ている。私よりも一世代ほど上だろうか、大人の女性、と言った雰囲気で色気ムンムンだ。
そりゃ、分かってたけど。綺麗な人がいっぱいいるんだろうけど。まさかこんなウルトラ級の美人がいるなんて、と心臓がじわり、と痛んだ。そんな私をよそに彼女はゆっくりとこちらを指差し――
「ミカエルーーっ!ミカエルちょっとこっちに来て頂戴ーー!!!」
と、叫んだ。思わず呆気に取られていると、私もよく知っている跡部付きの執事のミカエルさんがこちらに駆けてくる。
「お呼びでしょうか…と、松元様」
「やっぱり、そうなのね!彼女が千花ちゃん、なのね!」
ドレスの裾を翻しこちらに彼女が走ってくる。近くで見るとさらに凄い迫力で、手を取られ目が合うと、吸い込まれそうになる。
「初めまして、千花ちゃん!ちょっとこちらに来て頂戴、ミカエル!準備して!」
引き摺られるように屋敷に連れ込まれ、この脈絡のなさと行動の早さってお金持ち特有なのかな、なんて考えていた。